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UPDATE:2005/11/14

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薬物相互作用コンサルティング サンプル
 
同時服用ではないテルネリンとルボックスも併用は避けた方がよいか?
回答編
  本相互作用のメカニズムは、テルネリンの肝臓に存在するチトクローム P450 1A2(CYP1A2)による代謝をフルボキサミンが阻害することによる。その相互作用の程度(テルネリンの血液中濃度が何倍に上昇するか)は次の二つの要因の兼ね合いによって決定される。
  1. 代謝阻害剤となるルボックスを経口投与した後の肝臓に流入する血液における濃度(肝臓における阻害剤の濃度を反映する極めて重要な情報)。
  2. CYP1A2 によるテルネリン代謝に対するフルボキサミンの阻害能力。
直感的な理解としては、例えば、1) の濃度が高くても、2) の阻害能が低ければ相互作用は強くでることはないし、逆に 1) の濃度が低くても 2) の阻害能が強ければ相互作用は強く表れることになる。
 


本事例においては、結論からいうと、ルボックス 25 mg を服用後 12 時間経過しても、フルボキサミンの肝流入血中濃度は充分に高く、またテルネリンの代謝阻害能も極めて強いと推定されたAppendix 参照)。従って、ルボックスとテルネリンの服用間隔が 12 時間あっても両剤の相互作用は回避できないと考えられる。具体的には、本事例においては、テルネリンの血中濃度が約 2.46 倍以上に上昇すると予測されることから、投与は避けた方が良いと考えられる。このような両剤の服用時期の時間差(横軸)とテルネリンの血液中濃度の増加率(縦軸)の関係を種々ルボックス投与量で予測計算した便利なノモグラムを図に示す図1)。
 
上記のように結論づけた考え方、薬物動態学的解析に基づく計算方法を Appendix に示す。興味にある先生はご覧頂きたい。
 
<テルネリンの代替薬について>
  中枢性筋弛緩薬でテルネリンと同じような適応をもつ代替薬としては下記があげられる。
ギャバロン、リオレサール(一般名:バクロフェン):
代謝に関与する酵素の分子種に関しては不明であるが、肝代謝の寄与は 15% と比較的低く、残りは未変化体として腎臓から尿中に排泄されるため、肝代謝阻害の影響は少ないと思われる。しかし、頸肩腕症候群、腰痛症による筋緊張状態の改善には適応がない。
リンラキサー(一般名:カルバミン酸クロルフェネシン):
投与量の 84% がグルクロン酸抱合体として尿中に排泄されると報告されており、CYP 代謝阻害の影響はないと思われる。しかし、脳血管障害、痙性脊髄麻痺などによる痙性麻痺には適応がない。
アロフト(一般名:アフロクァロン):
消失における肝代謝の寄与を示す詳しい資料はない。テルネリンの適応症はほぼ網羅している。
ミオナール(一般名:塩酸エペリゾン):
動物において ω-1 水酸化を消化管の CYP が担っている(主に CYP1)という報告があるが詳細は不明。適応症はテルネリンと同じ。

注 意
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