「薬物相互作用コンサルティング」コーナー(2):Appendix | |
<チザニジン代謝に対するフルボキサミンの阻害定数 (Ki 値) の予測> | |
1. | まず代謝阻害に伴うチザニジンの AUC の上昇比は、Ki 値と[Cf] 値を用いて、(1) 式[PDF: 99KB] のように表すことができる。[Cf] は、肝細胞内の酵素近傍における非結合型濃度を表す。 |
2. | 臨床試験の結果から、マレイン酸フルボキサミン 100 mgを 4 日間服用した後、塩酸チザニジン 4 mgを 1 時間空けて併用すると、AUCが平均 32.73 倍になることが報告されている。 |
3. | したがって、この臨床試験におけるフルボキサミンの [Cf] がわかれば (1) 式から Ki 値が逆算できる。 |
<[Cf] 値の算出> | |
4-1. | フルボキサミンの [Cf] を算出するために、ルボックスのインタビューフォーム中の 100 mg 単回投与の血清中濃度推移から、フルボキサミンの薬物動態パラメーターを求めた(表)[PDF: 99KB]。 |
4-2. | ヒトにおいてフルボキサミンの [Cf] の正確な値を見積ることは困難であるが、門脈中のフルボキサミンの服用 1 時間後の血液中非結合型濃度 [CH,blood,f] を [Cf] として採用することとした。すなわち、図2 に示すように、フルボキサミンの門脈中非結合型濃度は、全身循環から供給される薬物濃度(Cmax,sys,blood)と消化管から吸収され門脈中に現れる薬物濃度(ka*D*Fa*exp(-ka*t)/Qh)の和に蛋白非結合分率(fB)を乗じることにより求められることとなる。 |
4-3. | フルボキサミンの薬物動態パラメーターを用いて(2)式 [PDF: 99KB] により [Cf] を求めた。 |
5. | 以上から、フルボキサミンの [Cf] は 0.123 μM と推算され、この値と臨床試験における R (AUC 上昇率) = 32.73 を (1) 式に代入すると見かけの Ki 値は 0.0039 μM と推算された。 |
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<フルボキサミンの非結合型血中濃度推移と Ki 値の関係> | |
6. |
次にルボックスの薬物動態パラメーターを用いて、ルボックス 25 mg/day を繰り返し投与した際の定常状態でのフルボキサミンの非結合型血液中濃度推移を求めた (図3a)。 この図から、フルボキサミンの非結合型血液中濃度は、服用 12 時間後においてもチザニジン代謝に対する見かけの阻害定数 Ki 値を超えており、チザニジンの血中濃度は約 2.46 倍に上昇すると推測された。 |
7. | 同様に、50 mg、100 mg 投与の際の定常状態でのフルボキサミンの非結合型血液中濃度推移を求めた (図3b, c)。同時服用でなくても明らかに、フルボキサミンのチザニジン代謝に対する見かけの阻害定数 Ki 値を越えているため、チザニジンの血中濃度は 3.92-6.83 倍以上に上昇すると推算された。 |
8. | フルボキサミン各投与量におけるチザニジンのAUC比の上昇率を図1 にまとめた。 |
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